「システムはリリースしたら完成。」
そう考えている企業は、まだ少なくありません。
しかし、本当にプロダクトの価値が問われるのは、リリースした後です。
ユーザーは実際に使い始めて初めて課題や要望を持ちます。開発側も利用データや問い合わせ内容を分析することで、「どの機能が使われているのか」「どこで離脱しているのか」「本当に必要な機能は何か」といった新たな気づきを得られます。
つまり、リリースはゴールではなく、改善のスタートラインなのです。
近年では、SaaSや業務システムだけでなく、ECサイトや会員サービス、スマートフォンアプリなど、あらゆるデジタルサービスで継続的な改善が当たり前になっています。
その一方で、
- KPIは設定しているものの成果につながらない
- 保守対応だけで改善まで手が回らない
- 改善したいが社内にノウハウがない
- 何を優先して改善すべきか分からない
といった悩みを抱える企業も少なくありません。
株式会社Engineerforceが実施した「プロダクトリリース後の運用改善の実態と開発パートナーの選定基準に関する調査」では、過去2年以内にBtoB向けプロダクト(SaaS・業務システムなど)をリリースし、現在プロダクト改善業務に携わる111名を対象に調査を実施しました。
調査結果を見ると、多くの企業が「改善の重要性」は理解しているものの、実際には改善まで十分に取り組めていない実態が見えてきました。
この記事では、調査結果と現場で感じている変化を踏まえながら、2026年に成果を出すための開発パートナー選びについて解説します。
調査レポート全文はこちら

▶https://engineerforce.io/resources/product_operation/
結論|2026年は「開発力」ではなく「改善力」が選ばれる時代
結論から言うと、これからのシステム開発会社選びで重要なのは、「システムを作れる会社か」ではありません。
本当に重要なのは、
- リリース後も伴走してくれるか
- KPIをもとに改善提案ができるか
- UI/UXを継続的に改善できるか
- 数値を見ながら事業成果につなげられるか
という「改善力」です。
これまで開発会社は、「要件どおりにシステムを開発すること」が主な役割でした。
しかし現在では、プロダクトを継続的に成長させることまで期待されるようになっています。
つまり、開発会社ではなく、「事業を一緒に育てるパートナー」としての役割が求められる時代へと変化しているのです。
なぜ今、リリース後の改善が重要なのか
ここ数年で、システム開発を取り巻く環境は大きく変わりました。
生成AIの普及により、以前よりも短期間・低コストでシステムを開発できるようになっています。
ノーコードやローコードツールの普及もあり、「システムを作ること」そのもののハードルは年々下がっています。
一方で、市場競争はますます激しくなっています。
同じようなサービスが次々と登場する中で、競争力を生み出すのは「どれだけ早く改善できるか」です。
例えば、
- 利用率が低い機能を改善する
- 離脱率の高い画面を改善する
- UIを変更して入力しやすくする
- ユーザーの声をもとに新機能を追加する
こうした改善を積み重ねることで、プロダクトは少しずつ成長していきます。
逆に、リリース後に改善が止まってしまえば、ユーザー満足度は下がり、競合との差は広がってしまいます。
つまり、「開発」よりも「改善」のほうが、事業成果に与える影響が大きくなっているのです。
111名調査から見えた実態|約8割の企業がKPIを設定している

調査では、リリース後のプロダクト改善について、78.4%の企業が「KPIを設定している」と回答しました。
この結果から、多くの企業が改善の重要性を理解し、目標を持って運用していることが分かります。
KPIを設定することは、改善活動の第一歩です。
数値をもとに改善を進めることで、感覚ではなく事実に基づいた意思決定ができるようになります。
しかし、KPIを設定していることと、実際に成果につながる改善ができていることは別問題です。
今回の調査では、そのギャップも明らかになりました。
KPIは設定している。それでも改善できない理由

リリース後の改善内容について質問したところ、最も多かった回答は
「不具合の修正・保守対応が中心」(44.1%)
でした。
一方で、
- 利用データを分析しUI/UX改善を継続している:10.8%
- KPI起点で改善から効果測定まで一体運用している:6.3%
という結果になっています。
つまり、多くの企業では「改善」を行っているつもりでも、その実態は保守や不具合対応が中心となっているケースが多いことが分かります。
もちろん、システムを安定稼働させるために保守対応は欠かせません。
しかし、本来の運用改善とは、「システムを壊れないように維持すること」ではなく、
「ユーザー体験や事業成果をより良くすること」です。
保守対応だけでは、ユーザー満足度や売上の向上にはつながりません。
データを分析し、課題を特定し、改善を実施し、その効果を検証する。
このサイクルを継続できるかどうかが、プロダクトの成長を左右します。
なぜ改善できない企業がこれほど多いのか
ここまで見てきたように、多くの企業はリリース後の改善の重要性を理解しています。
実際、約8割の企業がKPIを設定している一方で、改善活動の実態を見ると、不具合の修正や保守対応が中心となっている企業が最も多いという結果になりました。
では、なぜ改善の必要性を理解しているにもかかわらず、多くの企業は継続的な改善まで進められないのでしょうか。
今回の調査では、その理由も明らかになっています。
改善できない理由は、一つではない

調査では、リリース後の改善について83.8%の担当者が「課題を感じている」と回答しました。さらに、「まったく課題を感じていない」と回答した人は一人もいませんでした。
具体的な課題として最も多かったのは、「改善に充てる人員・工数が足りない」(54.8%)です。
そのほかにも、
- 改善に必要なノウハウや知見が社内にない(48.4%)
- 改善の優先度が上がらず後回しになる(47.3%)
- 改善の効果を測定・評価できていない(45.2%)
- 何を改善すべきか判断する材料がない(38.7%)
という回答が続きました。
これらの数字を見ると、それぞれが独立した課題のようにも見えます。
しかし実際には、これらは一つひとつがつながり合い、「改善できない状態」を生み出しています。
改善を推進できる人材・ノウハウが不足している
例えば、開発チームには保守対応や機能追加を担うメンバーはいても、ユーザー分析やUI/UX改善をリードできる人材が不足しているケースは少なくありません。
そのため、データは蓄積されていても「何を改善すべきか」「どのように改善すれば成果につながるのか」を判断できず、改善施策が進まない状況に陥ります。
結果として、改善の優先順位を決められず、分析やUI/UX改善が後回しになり、本来得られるはずの成果を逃してしまいます。
データがあっても、改善につながらない理由
最近では、多くの企業がGoogle Analyticsや各種分析ツールを導入し、ユーザー行動のデータを取得しています。
しかし、データがあることと、そのデータを活用できることは別の話です。
例えば、「申込率が下がっている」という数字は分かっても、
- なぜ下がったのか
- どの画面で離脱しているのか
- 何を改善すれば解決できるのか
までは、数字だけでは見えてきません。
データを分析し、課題を整理し、改善案を立て、実装し、その結果を検証する。
この一連のプロセスがあって初めて、データは事業成果につながります。
つまり、本当に必要なのは「データを集めること」ではなく、「データを意思決定に活かす仕組み」を持つことなのです。
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現場で感じる変化|相談内容は「開発」から「改善」へ
私自身、UI/UXデザイナーとしてさまざまなシステム開発プロジェクトに携わっていますが、この1〜2年でご相談いただく内容は大きく変化したと感じています。
以前は、
「新しいシステムを作りたい」
「この機能を追加したい」
「画面をデザインしてほしい」
といった、開発そのものに関するご相談が中心でした。
しかし最近では、
「リリースしたものの利用率が伸びない」
「ユーザーが途中で離脱してしまう」
「問い合わせが減らず、運用負荷が高い」
「改善したいが、何から手を付ければよいか分からない」
といった、リリース後の運用や改善に関するご相談が増えています。
これは、多くの企業が「システムを作ること」と「成果を出すこと」は別であると実感し始めているからではないでしょうか。
システムは完成しただけでは価値を生みません。
実際にユーザーに利用され、その体験を継続的に改善していくことで、初めて事業成果につながります。
そのため最近では、UIデザインだけではなく、KPI設計やユーザー行動の分析、改善施策の立案まで含めて相談を受ける機会が増えています。
だからこそ、開発パートナーに求められる役割も変わっている
このように、多くの企業が抱えている課題は、「システムを開発できるかどうか」ではありません。
本当に求められているのは、リリース後も継続的に伴走し、改善サイクルを一緒に回してくれる存在です。
開発会社に期待される役割は、「要件どおりにシステムを作ること」から、「プロダクトを継続的に成長させること」へと変化しています。
実際に今回の調査でも、その変化は数字として表れています。
企業が本当に求めているのは「開発会社」ではなく「伴走するパートナー」
ここまで見てきたように、多くの企業はリリース後の改善に課題を抱えています。
人員不足やノウハウ不足によって改善まで手が回らず、「改善したいのに改善できない」という状況に陥っている企業は少なくありません。
では、そのような状況の中で、企業は開発会社に何を求めているのでしょうか。
今回の調査では、その答えも明らかになっています。
約8割の企業が「改善まで伴走できる開発パートナー」を重要視
調査では、「リリース後も継続的に伴走し、改善まで支援できる開発パートナーは重要だと思いますか」という質問に対し、81.9%の企業が「重要」と回答しました。
これは、多くの企業が「システムを作って終わり」の関係ではなく、リリース後も継続的に相談できるパートナーを求めていることを示しています。
プロダクトは、リリースした瞬間が完成ではありません。
ユーザーの声を受け取り、利用状況を分析し、改善を繰り返しながら成長していくものです。
だからこそ、企業は「開発力」だけではなく、「改善力」や「伴走力」を重視するようになっています。
技術力だけでは選ばれない時代へ
さらに、「リリース後の運用改善を任せる開発パートナーを選ぶとしたら、何を重視しますか」という質問では、最も多かった回答は「企画から運用まで一体で支援できること」(40.5%)でした。
一方で、「技術力や開発実績が高いこと」は37.8%で2位となっています。
もちろん、技術力は重要です。
しかし、技術力だけでは選ばれなくなっていることも、この結果から読み取れます。
企業が求めているのは、
- 本当に必要な機能を一緒に考えてくれること
- KPIをもとに改善提案をしてくれること
- ユーザー体験を踏まえてUI/UXを改善できること
- リリース後も継続的に伴走してくれること
といった、「事業成果」まで見据えた支援です。
つまり、「何を作るか」だけではなく、「どう成果につなげるか」を一緒に考えられる会社が選ばれる時代になっています。
2026年版|失敗しない開発パートナー選びチェックリスト
これからシステム開発会社を選ぶ際は、見積もりや実績だけではなく、リリース後の支援体制まで確認することをおすすめします。
以下のチェックリストを参考に、自社に合ったパートナーかどうかを確認してみてください。
□ KPI設計から相談できる
開発だけではなく、「何を成果として改善するのか」を一緒に考えてくれる会社かどうかを確認しましょう。
□ UI/UX改善まで対応できる
見た目を整えるだけでなく、ユーザー体験を改善し、利用率やコンバージョン率の向上まで考えられる体制があるかが重要です。
□ データ分析・効果測定ができる
改善は実施して終わりではありません。
施策によってどのような変化があったのかを分析し、次の改善へ活かせる会社を選びましょう。
□ 改善提案を積極的に行ってくれる
依頼された内容だけを開発する会社ではなく、「こちらの方が成果につながります」と提案してくれるパートナーは、長期的なプロダクト成長に大きく貢献します。
□ PM・ディレクターがプロジェクトを推進してくれる
開発・デザイン・ビジネスの橋渡し役がいることで、意思決定のスピードやプロジェクト全体の品質が向上します。
□ 企画から運用改善まで一貫して支援できる
リリース後に別会社へ依頼すると、背景や仕様の共有に時間がかかり、改善スピードが落ちるケースも少なくありません。
企画から改善まで一貫して支援できる体制があるかどうかも、大切な判断基準になります。
ベンダー選びではなく、「プロダクトを育てるパートナー選び」へ
これまでのシステム開発では、「どれだけ高品質なシステムを開発できるか」が評価の中心でした。
しかし、生成AIの普及や開発手法の進化により、「作ること」そのものの価値は以前よりも下がりつつあります。
これから重要になるのは、リリース後にどれだけ素早く改善し、ユーザーの声を反映しながら事業成果につなげられるかです。
今回の調査でも、多くの企業が「改善まで伴走できるパートナー」を求めていることが明らかになりました。
これは、開発会社に期待される役割が、「受託開発」から「事業成長のパートナー」へと変化していることを示しているのではないでしょうか。
システム開発会社を選ぶというより、「プロダクトを一緒に育ててくれるパートナーを選ぶ」。
そんな視点を持つことが、これからのプロジェクト成功につながるはずです。
調査レポート全文はこちら

今回の記事では、調査結果の一部をご紹介しました。
調査レポートでは、
- リリース後の運用改善の実態
- 改善活動で企業が抱える課題
- 開発パートナーに求められる役割
- 運用改善を成功させるために重視されるポイント
など、全10設問の詳細データを掲載しています。
リリース後の改善体制や開発パートナー選びについて詳しく知りたい方は、ぜひ調査レポートもご覧ください。




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